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シリーズ「ラピュールはじめて物語」第１４回

今回は家業の倒産のお話です。
父親は、結構ハンサムで人当りも良く優しくてまわりの人達は、とてもほめてくれました。
父は、旅館業の現場に入ることはありませんでしたが、旅館の隣に「卓味」という食堂をオープンし、今でいうランチを警察や、近くの会社に配達するなどアイデアマンではありました。
しかし、当時女学生であった私から見た父親は、外で放蕩三昧、当然、
母ともうまくゆかずほとんど家にはいない状態でした。
また、私の祖母というのがなかなかの人で、男が駄目になるのは女房が悪いというような昔気質の気の強い人でした。
祖母のエピソードはいろいろありますが、お掃除のことでは、「丸く掃くな、ほこりは隅にたまるものだからすみを、きちんと掃除しなさい」と仲居さんに教えていたのを今でも覚えていますし、私もそのようにスタッフに教えています。
お掃除ひとつ満足にできないお嬢様育ちの母と農家のしっかり者の祖母がうまくいくはずもなく、父はほとんど家に寄り付かない・・・家庭はどんどん崩壊していくばかりでした。
商売が上手くいかない時、私達はよく景気がとか、政治がとか、外のせいにしますが実際は中から崩れていくものだとおもいます。
私の実家がよい例です。

人が相和して一つの目標に向かってゆけば商売は必ず成功します。
しかし実家はこのような状態ですから、商売がうまくゆくはずもなく、私が高校を卒業するころは旅館を閉めるか閉めないかの状態になっていました。
倒産の原因は、これだけではなく人のよい父が友人の借金の保証人になった事も原因の一つでした。
いよいよ店を閉める事になり、使用人も一人減り二人減り家には両親、祖母、私達姉妹三人が残りました。
借金もあり、取引先の業者が集金にくるのですが、以前とは全く違った対応です。全ての人がそうでした。
これが、天地がひっくり返るという事の一つなのだと思ったことを今でも覚えています。

このことが借金なしで会社を経営したいという私のビジョンになっています。
妹二人は、まだ学生でしたので、私が一家の生計を助けなくてはならなくなりました。進学はあきらめ、ある大手デイーラーに就職し、お給料のほとんどを家に入れ生計の足しにしてゆきました。
家も郊外に借家をかりましたが、今までとは違い狭い家での暮らしにはなかなかなれず、辛いものがありました。
そんな時私を支えていたのは、夜、外に出て今まで住んでいた町を見ることでした。暗闇の中にそこだけはかがやいていました。
（その頃は、まだ高いビルがなかったから見えたのです）

その時私は「今に、あそこに戻るんだ」と何度も心に誓いました。それが当時の私のエネルギーになりました。（望月信子）

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